東大祝辞で話題の上野千鶴子さんの命式を読んでみた

2019年4月12日に行われた東京大学の入学式で、上野千鶴子名誉教授(以下:上野さん)が読んだ祝辞が話題にあがっています。

祝辞は、東京医科大学の不正入試問題のエピソードに始まり、教育現場における男女不平等の実態をわかりやすく説明し、上野さん自らが切り開いてきた「女性学」の歩みについて語り、変化と多様性に拓かれた大学をつくるために、〝これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付ける〟大切さを伝える内容でした。

上野さんの祝辞に勇気づけられたというツイートも。

そんな先週土曜の朝、20年来の友人からこんなショートメールが届きました。

9年前の2010年4月10日、「iPhoneに変えて、Twitterを始めろ」とアドバイスをくれた恩人です。

上野さんの命式は、『情報生産者になる(ちくま新書)』 を買ったときに調べていました(昨年9月12日)

友人のリクエストに応えて、上野千鶴子さんの命式の特長について書いてみます。

ポイントは次の3つ。

上野千鶴子さんの命式で着目した点

①東京大学名誉教授を引き寄せた星

  • 月柱【劫財+印綬+衰】
  • 大運【比肩+帝旺】

②時流を読む力と、毒舌の星【傷官】

③幽霊も恐れて逃げ出すほどの強い意志力【戊戌】魁罡

たぐいまれなる意志の力と組織感覚を活かし、天命を拓いてきた上野さん。

上野さんの命式を読み進めるなか、あらためて四柱推命への信頼を厚くしました。

さっそく説明してみます。

上野千鶴子さんの通変バランス

こちらが上野さんの命式の通変星のバランス(強弱)を示したパラメーターです。

こちらが上野さんの命式の通変五行バランスです。

東大名誉教授を引き寄せた星とは?

日本の最高学府、東京大学名誉教授というポストを引き寄せた星。

それが、上野さんの仕事運を示す月柱の【劫財+印綬+衰】と、上野さんの社会的使命(第二宿命)を表す大運の【比肩+帝旺】の星です。

なかでも、オフィシャルな面を表す中心星【印綬】は、上野さんの仕事運や壮年期の運を読むとても重要な星です。

【印綬】の性質

印綬は知性と名誉の星

  • 物事を論理的に考えることが得意
  • 勉強家で研究熱心、知的好奇心が旺盛
  • 人に何かを教えるのが上手

上野さんの月柱の十二運星【衰】には「学者、コンサルタント、アドバイザー」という意味があり、上野さんの職業そのもの。

十二運星【衰(すい)のキーワード

  • 安定、保守的、石橋を叩いて割る
  • 浮ついたところがなく常に冷静沈着
  • 自分発言や行動に責任を持ち、慎重に進める
  • 何をするにも心から愉しめない面も

これに加えて、上野さんのキャリアアップに奏功していると読みたいのが【劫財(ごうざい)】という星。

【劫財】には、「パワフルな活動家の星、組織づくりが得意」という意味があります。

昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授(以下:本庶佑さん)も月柱に【劫財】を持っています。

見比べるとわかりますが、上野さんと本庶佑さんの命式は共通点があることが、今回調べてわかりました。

ちなみに、本庶佑さんの月柱の【墓(ぼ)】は探究心の星です。

本庶佑さんの命式

上野千鶴子さんの命式

上野さんの大学教員としてのキャリアは、平安女学院短期大学の専任講師からスタートしました(1979年)。

その後、1989年(平成元年)4月に京都精華大学人文学部助教授、教授へ。

1993年(平成5年)4月 東京大学文学部助教授に就任されます。

当時、大学生だったわたしは、ゲイの友人(カップル)と三人で塾を運営していました。

塾長の友人はフェミニストで、上野千鶴子さんをリスペクトしつつ密かにライバル心も燃やしており、「上野さんって、さっすがよねぇ〜」とよく口にしていたことを思い出します。

学者でトップに上り詰め、功名を手にするには、強い研究心【印綬】はもとより、マネジメント【劫財】の素養が必要であることがわかります。

上野千鶴子さんの第二宿命とは?

きわめつけは「第二宿命」です。

第二宿命とは、社会から期待される役割(使命)のこと

「大運」の二行目で読みます。

わたしの場合、月柱(仕事運、30〜40代の壮年運)を補完する意味合いで読んでいます。

こちらが上野さんの大運表です。

二行目に【比肩+帝旺】があります。

これは「闘志あふれる努力家で、個の力でトップにのぼりつめ、絶対的な存在になる」と読みたいところ。

ちなみに、昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授も第二宿命に【比肩】を持っています。

本庶佑さんの大運(2段目:第二宿命)

【比肩】の特長

自我、自尊心、独立心を表す通変星

  • 「肩を並べる」という意味
  • 「兄弟」や「ライバル」という意味も
  • 負けず嫌いで独立心旺盛、性格はサッパリ

 

【帝旺】の特長

頭領、王様の星

  • カリスマ、トップ、統率力、絶対的な存在
  • 実力を存分に発揮し、目的や目標を次々と達成していく強い星
  • プライドが高く悠然としている

「年柱」と「第二宿命」にある【比肩】は、上野さんの命式のシンボリックな通変星です。

上野さんの性差別への強い憤りにねざした理想社会への熱い思いは、「フェミニズム」「女性学」として結実しました。

【比肩】には「仲間、友人」という意味もあります。

「フェミニズム」を世に広めた原動力は、彼女の負けず嫌いな性分だけでなく、人々を対等な「仲間、友人」として捉える【比肩】の影響を色濃く受けています。

上野千鶴子さんのキャラを示す【傷官】

上野さんは、芸達者な社会学者です。

時流を読み、必要なエッセンスを上手に切り取って、ユーモアや皮肉を交えながらわかりやすかたちで指し示してくれる。

1990年代、「フェミニズム」という思想に注目が集まった背景には、彼女のシャープな表現力がありました。

時流を読む力と、毒舌の星【傷官】です。

プライベートな面を表す「自星」に型破りで聡明な通変星【傷官】があります。

【傷官】の性質

型破りで聡明の星

ストレートに物事を表現するクリエイティブな星

  • 感覚がシャープ、時流を読む力に優れている
  • 毒舌だが、傷つきやすい面も
  • 美意識が高く、美的センス抜群
  • 感情の起伏が激しく、不平不満を抱きやすい
  • 芸術関係(作家、画家、音楽家、デザイナー)、俳優、辛口コメンテーター、評論家などに多い

〝上野千鶴子〟という名前をメジャーに押し上げた一冊が、『スカートの下の劇場〜ひとはどうしてパンティにこだわるのか』でした。

初版発行は1989年。

早いものであれからもう30年が過ぎました。

鮮烈な印象を与える装幀とタイトルの本書をたずさえ、フェミニズム界に颯爽と顕れたカッコイイ女性=上野千鶴子、という印象がいまもあります。

シャープな感覚で時流を読む力に優れ、表現力抜群の上野さん。

彼女の切れ味がよいスタイルに【傷官】の星が効いています。

幽霊も恐れて逃げ出すほどの強い意志力の日干支

こちらが上野さんの命式の通変五行バランスです。

 

上野さんの命式は「土」の五行が突出している自星(比劫)突出タイプです。

自星(比劫)突出タイプ

  • 一見ソフトで社交的に見えるが、人は人、自分は自分と考えるタイプ
  • 人や社会との協調性はない
  • 強靱な意志力とバイタリティが取り柄
  • 何に対しても自分のこだわりがあり、強引にやり遂げようとする

上野さんの五行バランスは、イチロー選手の妻・弓子さんと共通のタイプで、「土」の五行がダブルの【戊戌(つちのえいぬ)】です。

上野千鶴子さんの命式

日干支の【戊戌】は魁罡(かいごう)という特別な干支でもあります。

魁罡(かいごう)

幽霊も恐れて逃げ出すほどの強い意志力を持つパワフルな干支

 

 【庚辰】(かのえたつ)

 【庚戌】(かのえいぬ)

 【壬辰】(みずのえたつ)

 【戊戌】(つちのえいぬ)

 【戊辰】(つちのえたつ)

 【壬戌】(みずのえいぬ)

 

※流派により異なる

この魁罡(かいごう)と呼ばれる干支を持つ人は、激しく荒波に揉まれるような運気の人生を生きる傾向があるといわれています。

上野さんが非常にパワフルなエネルギーを持って生まれてきた方であることがわかります。

彼女の圧倒的に強い自我と強烈な意志の力が、フェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティなどマージナルな分野を切り拓いてきました。

祝辞でも触れられているように、まさにパイオニアです。

誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。

ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。

今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。

そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。

(出展)平成31年度東京大学学部入学式 祝辞

ちなみに、昨年、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑(ほんじょ たすく)特別教授も日干支が【庚辰】で魁罡(かいごう)でした。

本庶佑さんの命式

今回の調査は、とても興味深い学びになりました。

四柱推命の勉強を進めるなかで、今回のような共通要素の発見がたまりません。

メールをくれた友人に感謝です❤️

〝女東大〟どこへ行く

先週土曜の朝、東大入学式の祝辞の件で、友人とショートメールで盛り上がりました。

「いろいろ言われているちづちゃんだけど、彼女に祝辞をやらせた東大もまたアナーキー。治ちゃんにもやらせたかった」

といった主旨のメールが返ってきました。

〝治ちゃん❤️〟を敬愛してきた彼女らしいリプです。

治ちゃんとは、今年1月お亡くなりになった作家・橋本治さんのこと。

橋本治といえば、東大駒場祭のポスターの「とめてくれるなおっかさん、背中のいちょうが泣いている、男東大どこへ行く」のキャッチコピーで知られています。

「とめてくれるなおっかさん、背中のいちょうが泣いている、女東大どこへ行く」

そんなメールを冗談めかして返しましたが、笑いごとでは済まされない状況はいまも継続中です。

〝生きのびる知恵〟としてのフェミニズム

韓国の小説『82年生まれのキム・ジヨン』が累積販売部数100万部を突破し、話題です。

日本でも発売1ヶ月で発行部数が5万部を突破、韓国で進んでいる映画の公開も待たれます。

フェミニズムの視点で世の中を構造的にとらえ直す知性を身につける。

これは、女性にとって〝生存戦略〟であり、大学時代にフェミニズムを学んだ一人として、この学問を全女性に学んでもらいたい、と考える一人です。

反面、フェミニズムの浸透が一筋縄でいかないところが、性差別の巧妙さであることも事実です。

なぜなら、性差別は一つの制度として継承され、文化として浸透しているから。

女性が劣っているという感覚や意識は、教育やしつけなどで潜在意識に刷り込まれてしまっているためです。

女性の〝生存戦略〟に必要なフェミニズムを、女性自らが望まないという現実があります。

ここを解きほぐしていくのは容易なことではありません。

しかし、SNSなど個人の情報発信環境が整うなか、上野さんが切り開いてきた理想社会実現への道は、時間がかかりますが、着実に進んでいくと信じています。

「個人的なことは政治的なこと」

ていねいに「個」に向き合い、「個」を育てるところから静かに着実に改革を推し進めていきたい。

四柱推命を学びはじめ、その思いをより強くしています。

韓国で、累積販売部数100万部という異例のヒットを飛ばす『82年生まれのキム・ジヨン』について、四柱推命の目線で記事を書いてみました。よろしければお読みください。

『82年生まれ、キム・ジヨン』を四柱推命で読んでみた

 

参考資料として以下転載いたします。

平成31年度 東京大学学部入学式 祝辞

平成31年度東京大学学部入学式 祝辞

ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。

女子学生の置かれている現実

その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大などの地方国立大医学部が並んでいます。ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。

女子学生が男子学生より合格しにくいのは、男子受験生の成績の方がよいからでしょうか?全国医学部調査結果を公表した文科省の担当者が、こんなコメントを述べています。「男子優位の学部、学科は他に見当たらず、理工系も文系も女子が優位な場合が多い」。ということは、医学部を除く他学部では、女子の入りにくさは1以下であること、医学部が1を越えていることには、なんらかの説明が要ることを意味します。

事実、各種のデータが、女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことを証明しています。まず第1に女子学生は浪人を避けるために余裕を持って受験先を決める傾向があります。第2に東京大学入学者の女性比率は長期にわたって「2割の壁」を越えません。今年度に至っては18.1%と前年度を下回りました。統計的には偏差値の正規分布に男女差はありませんから、男子学生以上に優秀な女子学生が東大を受験していることになります。第3に、4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。この差は成績の差ではありません。「息子は大学まで、娘は短大まで」でよいと考える親の性差別の結果です。

最近ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えました。それはパキスタンにとっては重要だが、日本には無関係でしょうか。「どうせ女の子だし」「しょせん女の子だから」と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling downすなわち意欲の冷却効果と言います。マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。そのとおり、多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです。

そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。東大の女子学生からはこんな話を聞きました。「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学…」と答えるのだそうです。なぜかといえば「東大」といえば、退かれるから、だそうです。なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。なぜなら、男性の価値と成績のよさは一致しているのに、女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがあるからです。女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです。

東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱した事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。

東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。この3月に東京大学男女共同参画担当理事・副学長名で、女子学生排除は「東大憲章」が唱える平等の理念に反すると警告を発しました。

これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。

学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。

女性学のパイオニアとして

こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの?日本の歴史に同性愛者はいたの?…誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。

学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。

変化と多様性に拓かれた大学

言っておきますが、東京大学は変化と多様性に拓かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証です。東大には、在日韓国人教授、姜尚中さんも、高卒の教授、安藤忠雄さんもいました。また盲ろう二重の障害者である教授、福島智さんもいらっしゃいます。

あなたたちは選抜されてここに来ました。東大生ひとりあたりにかかる国費負担は年間500万円と言われています。これから4年間すばらしい教育学習環境があなたたちを待っています。そのすばらしさは、ここで教えた経験のある私が請け合います。

あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。

東京大学で学ぶ価値

あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。ようこそ、東京大学へ。

平成31年4月12日
認定NPO法人 ウィメンズ アクション ネットワーク理事長
上野 千鶴子